お茶に関する素朴な疑問(お茶のコラム)
お客様から寄せられたお茶に関する素朴な疑問の話あれこれです。軽く読み流していただければ幸いに思います。宜しくお願いします。
【お茶を摘む時期の味の違い】
お茶を摘む時期によって味が違います。若く柔らかいうちに摘んだお茶と大きく開いて堅くなってから摘んだお茶では成分が違うからです。茶葉は成長するに従って「カテキン類」「アミノ酸」「カフェイン」などが減少して食物繊維と糖類が増加します。食物繊維が増えることは葉が堅くなることでお茶にしたときに成分が溶けにくくなります。従って早く摘んだ若い茶葉の方がうま味成分が多く、かつ成分が溶けやすく、おいしいお茶ができます。
【山間地のお茶はなぜおいしい】
昔から銘茶の産地は川の上流域の山間地で有名なところがあります。なぜ山間地のお茶はおいしいのでしょうか? 山間地は平地と比べる掛川茶畑と日照時間が短く、平均気温が低く朝晩の気温差も大きいところが多いです。そのため新芽の成長が遅く、新茶の時期が遅れますが新芽がゆっくり成長するために、うまみ成分が時間をかけて醸成され、また日照時間が短いためカテキン類が少なく、アミノ酸類が多くなる傾向があります。従って苦み、渋みがおさられ、うま味・甘みが多い茶葉に仕上がります。またあと一つの特徴は「山のお茶」特有の強い香気が有ります。
【高いお茶ほどおいしいか】
お客様からお茶を買うときにお値段が高ければおいしいお茶でしょうかとご質問されることが有ります。確かに高級茶になればなるほどうま味の成分のアミノ酸が多いお茶になります。最近は近赤外線分析装置によってお茶のアミノ酸の成分量が簡単に測定され、多い物ほど高値で取引されます。しかしアミノ酸が多ければそれだけですべてのお客様にとっておいしく感じるお茶でしょうか? たとえばアミノ酸がきわめて多い玉露やかぶせのお茶の濃厚なうま味は「海苔」の様な味がします。その甘露は人によっては非常においしく珍重されますが、慣れないお客様にとってはまずい生臭いと感じる方もいらっしゃいます。逆に下級茶になればなるほど、あっさりしてうま味が少なく、苦みや渋みが増えてきます。従っえてお客様にとってお値段を抜きにして「うま味」と「苦み」や「渋み」のバランスをどの辺でお感じになるかがポイントになると思います。お客様に合った物が最適なお茶だと思います。いろんな価格帯のお茶をお試しいただいてご自分にあったお茶をお選び下さい。
【古くなったお茶はどうする】
賞味期限を過ぎた物でも冷蔵庫に入れてあれば賞味期限を過ぎた物でも半年位はご使用になれます。封を切ったお茶は湿気を吸っていたり酸化している事もありますのでその場合はホットプレートやフライパンにアルミホイルなどを敷いて110~120℃くらいの温度でかき回しながら加熱し香ばしい香りがしてきたら火を止めて下さい。そのまま置いておきますと余熱でかなり褐色になりますので早めに下ろして下さい。香ばしい自家製のほうじ茶ができます。
【玄米茶は玄米を使用していない?】
玄米茶は使用する茶葉よりもブレンドする玄米の品質が重視されます。玄米茶だけど玄米は使用しません。玄米は米ぬかの臭いが強く、使用出来ません。原料はうるち米、もち米を精白して水洗いします。そしてせいろで十分蒸します。次に早急に冷やして固まらないように注意して十分乾燥させます。そして焙煎機で表面が狐色になるまで丁寧に焙じます。優良品は表面が平均に狐色になり光沢が出ます。上質玄米茶はもち米を使用しますが、一般の玄米茶にはうるち米が使われることが多いです。【お茶は高いか】
良いお茶は高いと云われますが本当でしょうか?上級なお茶は100g1000円以上しますが、ブレンドコーヒーは100g300~400円です。重量あたりで計算するとお茶の方が高いですが。一杯あたりのコストではどうでしょうか? お茶は一杯あたり茶葉を3gほど使います。100g1000円のお茶だと30円になります。コーヒーは一杯あたり10gの豆が必要なので100g300円のコーヒーなら30円になります。コストだけでは同じですが、良いお茶は3~4煎おいしく飲めますので30円÷3=10円になり、よいお茶でも決してお高くなりません。
【緑茶の色は茶色?】
日本人は色を表現するのに自然界に有る物の色をそのまま云います。桃色、うぐいす色、空色、水色、灰色などなど・・・それらに対して赤色、緑色、黄色などは元々中国の漢字を意味する言葉を使っています。それでは本題に戻りますが緑茶は急須で入れてもキレイな緑色をしていますが、こぼれたお茶などを拭いた布巾を暫くおくと色が褐色になります。その色がまさに茶色になります。あと一つ理由をあげると昔から庶民が飲んでいたお茶は茶葉を摘んで直に釜に入れて炒ります。そしてすぐむしろなどに広げてさまして天日で乾燥させます。できたお茶は黒っぽい色をしていたそうです。お湯で出しても赤かったり、黄色をしていたり決して緑色に出なかったそうです。その長い歴史的な流れの中で茶色という色の概念が定着したと考えられます。今のようにキレイな緑色のお茶の作り方(茶葉を蒸気で蒸して乾燥して仕上げる製造方法)は江戸時代の中期以降だそうです。
【お水でお茶の味が変わる?】
昔からお茶には軟水が良いと言われてきました。水の硬度は、水に含まれるカルシウム塩とマグネシウム塩の総量を炭酸カルシウムの量に換算し直して示します。水1リットル中に炭酸カルシウムが1mgあるものを硬度1とします。そして、硬度200以上を硬水、硬度100以下を軟水と呼んでいます。日本の水の硬度は20~80程度のものが多く、ヨーロッパの水は200~400のものが多いようです。また、沸騰させると硬度が下がる一時硬水と、ヨーロッパの水のように沸騰してもあまり下がらない永久硬水とがあります。軟水でお茶を入れると、茶の成分がよく抽出され、旨味、渋味、苦味がバランスよく出て、日本茶本来の味を引き出します。しかし、硬度が低すぎる(10以下)と苦渋味を強く感じるようになり日本茶には適さなくなります。日本茶には硬度50~80程度の水が適しています。お茶は水によりビックリする程、味が変わることがあります。違うお水でお茶を味わうのも日本茶の楽しみ方のひとつです。ただし、硬度が高すぎると、味は淡白になり、水色は無色に近くなります。紅茶では軟水がよく、300程度の硬水だと水色が暗色になります。ウーロン茶はどんな水でも影響は受けにくいようです。結論は日本の水は各種のお茶に相性がよいといえます。
お茶の生産について
お茶はツバキ科の常緑樹です。茶の樹は10月頃になると白い花を咲かせます、やがて花が散り残された子房は毛に覆われて越冬し、春とともに成長して夏頃には成熟した種子になります。しかし茶栽培では葉 以外に栄養分の消費を防ぐために花や実をつけさせません。葉が摘み取られるのは1年に3回くらいで一番茶では4月の下旬から5月中旬頃まで、二番茶ではその後40~50日後の6月下旬から7月上旬に伸びた新葉を摘み、3番茶は更に30~40日後の8月初旬頃摘みます。 苗木から育てて一人前の茶園になるまで約5年かかります。茶の樹が威勢のいいのは7年~10年くらいです。茶樹は施肥したり雑草を取ったり敷き草をして防寒対策し大事に育てられます。一番茶の芽生えの頃は良く霜の被害が有ります。風のない晴れた日の明け方に良くあります。その為防霜対策として防霜ファンが取り付けられています。
【茶の栽培の北限について】
チャはもともと原産地が亜熱帯ですので寒さには通常弱い植物です。お茶の栽培が経済ベースで採算がとれる北限は太平洋側は茨城県大子町と日本海側は新潟県村上市を結んだ線が北限になります。栽培の北限は青森県黒石市になります。
【一番茶、二番茶とは】
茶の樹の冬期は休眠状態になっていますが寒い時期を通り過ぎる3月頃になると気温の上昇と共に茶芽がふくらみ伸びてきます。そして黄緑色の新芽が伸びて一葉、二葉と開き始めてきます。静岡県では4月下旬~5月上旬にかけて摘採されるのが「一番茶」です。一番茶を収穫した後2週間位してまた新しい新芽が出てきます。一番茶の収穫後45日ぐらいで「二番茶」がとれます。品質の面では「一番茶」の方が上になります。秋から冬の冬眠期を経て樹の中に十分蓄えていた栄養分が一気に「一番茶」の新芽の為に消費されるからです。うま味の成分のテアニンが「二番茶」の3倍以上有りますのでおいしいわけです。お値段も「一番茶」の方が高いです。二番茶は短期間で急成長するため一番茶ほど「うま味」の成分は少ないですが盛んな太陽の熱を浴びて成長するのでカテキンとかタンニンが多く含まれています。
静岡茶について
【静岡茶はなぜ優れているか】
静岡県の茶園の面積は17,100ha(日本全体の40%)で荒茶生産量は30,800t(日本全体の38%)で茶の生産はダントツです。もともとチャの樹は亜熱帯原産で温暖な気候を好みます。しかし極端に暑い地域では茶の生産が多いですが品質が極端に落ちます。かたや寒冷地での生産はもともと亜熱帯原産のチャの樹にとっては寒さに弱く凍霜害を受けやすく生産が安定しません。チャの樹の栽培に適した処は年平均気温が14~16℃の範囲で冬の最低気温が-5℃程度に収まる処とされています。また年間の降水量が1,500mm以上で特に3月~10月の生育期間に1,000mm以上必要とされています。これらの条件の気温と降水量とも静岡県の一部を除いて殆ど当てはまっています。静岡県は気象の面でも優位な立地条件になっています。また静岡県は茶の栽培の歴史が長く今まで多くの人たちが築いてきた優れた栽培技術のノウハウや多くの優秀な栽培管理の機械や製茶機械のメーカーが有ります。また荒茶の仕上げ加工業者が約600社もあり全国に向けての一大集散基地となっています。
【静岡でも紅茶作っている】
日本で紅茶が作られたのは明治7年(1874年)でした。その頃は生糸とともに重要な輸出品でした。世界の需要はその頃緑茶から紅茶に移りつつ有りました。当時日本政府は中国人技術者をよんで国産紅茶の製造の指導に当たらせました。それから輸出用に紅茶は生産されるようになりましたが、もともと日本の紅茶原料の茶葉は中国種の系統で紅茶の原料には向かない品種でした。かたやインドやセイロンの紅茶原料はアッサム種という品種で紅色が濃く香りの非常に強い茶葉で日本の紅茶より優れ太刀打ちできませんでした。そこで日本政府は日本に適した紅茶の原料のための品種の開発をはじめました。昭和10年頃に「べにほまれ」という優良品種ができました。その後中国種とアッサム種を交配して「べにひかり」、「べにふうき」など育成されましたが昭和30年代には8,500トンも生産されましたが海外との価格競争に敗れ、昭和40年代の半ばで終わりました。現在少しですが国産紅茶として生産消費されています。
お茶の気象
【茶の凍霜害について】
茶の樹の原産地は亜熱帯です。従ってもともと寒さには弱い性質があります。日本で栽培するのには気候とうまく向き合っていかなければ被害が出ます。茶芽の耐寒性は厳寒期はそれなりにあり、-6℃くらいは耐えられますが、春から新芽が発達して水分を多く含むようになるとだんだん寒さに弱くなり-2℃で凍霜害を受けます。日本の上空に寒気が流れ込み高気圧が覆い、風のない朝方には放射冷却現象がおこり非常に冷たい霜が新芽や茶葉におります。霜に当たった新芽は組織が壊死して茶色に変色していまいます。もちろんお茶の品質の低下は免れません。そのために冷たい空気を撹拌するために茶畑の各隅には大型の防霜ファンが設置されています。
【チャの気象災害】
チャの気象災害には寒害、凍霜害、干害、湿害、雪害、潮風害など有ります。干害は雨が降らない水不足で、湿害は長雨などで排水が悪い場合、根腐れを起こす事などです。潮風害とは台風の通過などで非常に強い潮風が吹き続くことで葉が傷んだり塩害が発生することです。主に九州から東海の沿岸部で起きることがあります。また最近は温暖化の影響で長期間雨の降らない干害が頻繁に起こるようになりました。チャの樹にとって一番深刻なのは凍霜害です。一番茶の摘採の直前に低気圧が通り過ぎた後、寒冷な高気圧に覆われると発生しやすくなります。凍霜害は-2℃以下になると発生して新芽が壊死して枯れてしまいます。この時期夜間に晴れて雲がなく、風が弱い時はチャにとって大変危険なサインです。だいたい八十八夜を過ぎると遅霜の被害はなくなります。
凍霜害を防ぐ方法には、茶樹を被覆する被覆法、大型の扇風機で風をおこす送風法、茶樹に水をまく散水氷結法が有ります。この中でも現在一番普及しているのは「送風法」です。1970年代にミカン園で実用化されていた「防霜ファン」を茶園用に改良されて全国に広まっていきました。防霜ファンが上層の暖かい空気を吹き下ろすことにより、茶株面付近に出来た冷たい空気の層を撹拌して温度を上げます。防霜に一番効果のある散水氷結法は茶葉を氷で包み0℃以下にならないようにする方法ですが、大量の水の確保や排水設備の確保などむずかしい課題が多く、あまり普及していません。
【誘蛾灯による害虫駆除】
茶の樹にもいろんな害虫がつきます。2種類に分けられます。1つは新芽を食害して生葉の収量や品質に直接影響を与える害虫、もう1つは成葉や根を食害したり、樹液を吸って樹勢を弱らせたりする害虫です。その中でも前者の蛾など仲間を捕獲殺虫するために「誘蛾灯」を茶畑に設置します。虫の光に集まる性質を利用し、蛾などの害虫を誘い寄せて駆除します。特に夏の夜になると街灯の光に虫が群がっているのをよく見ますが、誘蛾灯はこのような虫の性質を利用して虫を捕獲し殺虫する機械です。蛾やカメムシなどの夜行性の虫は照明光に吸い寄せられるように集まります。虫が光源に向かっていくこの習性は、走光性と呼ばれ、誘蛾灯もランプの光によって虫を誘引し捕獲します。虫が感じる光の波長域は250~400nm(紫外領域)。人間の可視光は400~700nmなので虫は人間に見えない紫外線を色として認識しているのです。